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カンヌ国際映画祭・パルムドール受賞 2018.06.08公開『万引き家族』短評

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『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』『三度目の殺人』とヒット作・話題作を連発し、国内外の映画祭、映画賞の常連となっている是枝裕和監督最新作。

“犯罪でしか繋がれなかった”家族を演じるのはリリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、城桧吏、佐々木みゆ、樹木希林。

更に、池松壮亮、緒方直人、高良健吾、池脇千鶴、柄本明が脇を固める。

音楽を担当するのは来年でデビュー50周年となるYMO/ティンパンアレイ/はっぴぃえんどの細野晴臣

ストーリー

街角のスーパーに子供連れの中年男がやってくる。

男の名前は治、子供の名前は祥太、二人は買い物をするふりをしながら見事な手際と連携で次々と商品を万引きしていく。

二人は帰り道団地のベランダで部屋から閉め出されている少女に出会い、流れで家に連れて帰っていく。

家には祖母の初枝、妻の信代、信代の妹の亜紀が暮らしていた。

じゅりを連れてきた二人を見てどうするつもりなのかとぼやきながらも三人はあれこれと世話を焼きだす。

じゅりを家に戻そうと団地に戻ってきた治と信代、しかし、窓ガラス越しに二人の耳に「じゅりを産みたくて産んだわけではない」という母親の声が聞こえてくる。

じゅりを残していくわけにはいかなかった。

治は日雇いの工事現場へ、信代はクリーニング工場に出勤、学校は家で勉強を押していもらえない人間の行くところだと思っている祥太はじゅりを連れて近くの駄菓子屋へ万引きに。

一方、初枝は一家の定収入である月々の年金を下ろしに銀行へ。

亜紀は初枝に付き合った後、JK見学店に出勤、そこでは男性客相手にセーラー服に身を包みマジックミラー越しに下着姿を見せるときも。

ある日、テレビで少女誘拐のニュースが流れる。

画面に映っていた少女はじゅりだった。

もはや一家の一員となっていたじゅりは“りん”と名を変えて家族として暮らし始めた。

夏になり、ケガを治した治はその後も仕事に出ず、信代はリストラされた。

亜紀は常連の4番さんと密かに交流を持つようになった。

貧しさが迫ってきても家族はいつも明るく、家族で海にも出かけた。

ただ、祥太だけは自分の仕事に疑問を抱くようになっていた。

是枝監督のリアルとファンタジー

今作の元ネタは死亡届を出さずに家族の年金を不正受給していたという事件が発端。

非常に生々しいところから出来上がったこの映画は、しかし不思議は夢物語のような空気を醸し出している。一つボタンを掛け違えた瞬間全てが崩壊するというギリギリのところで成り立っている絆だからこそなのかそこ抜けな明るさが家族全体を包んでいる。

前作『三度目の殺人』もリアルな殺人という行為や虐待の影をしっかりと描きながら、その一方で雪景色をバックにした幸せそうな雪合戦シーンが挿入されメインキャラクターの一番奥底の心情を感じさせる。

JKビジネスで働く松岡茉優のリアルな肢体を見せる一方で、素性も知らない男性客4番との間には何も語らずに抱えている感情を共有するシーンを用意してくる。

元々、ドキュメンタリー畑から出た是枝監督はリアルをリアルとして捉えたうえでフィクションという名のファンタジーにくるむことができている。

『万引き家族』はそんな是枝映画の真骨頂を味わえる一本と言っていいだろう。

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