2018/02/01公開『スリー・ビルボード』を紹介

スリービルボード

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3月に発表される第90回アカデミー賞の作品賞に最も近いと言われる『スリー・ビルボード』。ベネチア国際映画祭、トロント映画祭を席巻しゴールデングローブ賞でも最多受賞となった。主演は『ファーゴ』のオスカー女優フランシス・マクドーマント、共演にウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルという芸達者がそろっている。監督のマーティン・マクドナーは舞台畑出身でこれが長編映画としてはまだ三作目。

今日的なテーマを豊富に取り込みながら、実はベースではなくオリジナル脚本で勝負した。

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ストーリー

ミズーリ州の片田舎で、アンジェラ・ヘイズという10代の女性がレイプ後に無残にも焼き殺されるという事件が起こる。

母親のミルドレッドは、7ヶ月経っても警察が犯人を逮捕することができない状況に憤りを覚え、地元の警察署長ウィロビーを名指しで批判するものを含む3枚の大きな広告看板を出した。

地元住民は困惑し、名指しされたウィロビー署長、そしてレイシストの警官ディクソンは怒りに震えていた。地元の名士でもあるウィロビーを糾弾したミルドレッドは、住民に嫌がらせをされる。ディクソンは、広告代理店のオーナーを脅迫し、ミルドレッドの友人で黒人女性のデニスをドラッグ所持の罪をでっち上げて逮捕し、さらには保釈も拒否した。

地元住民、そして警察署の仲間たちがウィロビーを擁護する理由には彼の功績だけでなく、彼が末期癌であると診断されていたこともあった。ウィロビーはミルドレットに自らの努力を語ったのちに自殺する。このことは住民たちに大きなインパクトを与え、ミルドレッドへの風当たりはさらに強くなっていく。看板は放火され、ミルドレッドはディクソンが犯人であると考え、警察署に火炎瓶を投げ込みディクソンは火傷を負う。

新たな警察署長によって解雇されたディクソンはウィロビーの遺した手紙を読み、改心してアンジェラの事件に真剣に取り組もうとする。そんな中、偶然バーでアンジェラと同じ手口の犯行を滔々と語る男を目撃したディクソンは容疑者としてマークする。

今年のアカデミー賞レースを占う。

前哨戦、中には発表時期が近いだけで、アカデミー賞と全く選ぶ人たちが違うので世に言われるほど前哨戦とはなっていないものもありますが・・・。

今年は2強のぶつかり合いならぬすみ分けでほぼほぼ結果が固まっています。

一方がギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オブ・ウォーター』。そしてもう一方がこの『スリー・ビルボード』。

『シェイプ・オブ・ウォーター』はデルトロ映画ともいうべき大人のダークな寓話。一方本作は実は今年対抗馬の多い人種問題などをたっぷりと含んだ社会派作品。特にキャスリン・ビグロー監督『デトロイト』とはかなりテーマがかぶっている。ただ、大きな違いは『スリー・ビルボード』がフィクションであること、そして女性映画であること。今年のゴールデングローブ賞で主だった女優陣がセクハラ問題に抗議の意味を込めた黒いドレス姿で登場したり、“#METOO”という言葉が流行語になったりと今年は人種問題に加えて女性の社会的なあり様が改めて注目を浴びています。

『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』はともに女性を主人公にした映画ということもあって常に対抗策をリードしています。

実話系社会派の『デトロイト』と『ペンタゴン・ペーパーズ』も有力ですが、監督・出演者がすでにアカデミー賞受賞済み。『ダンケルク』と『ウィンストン・チャーチル』はコインの裏表のような作品ということもあって票の分裂が予想できます。

そうなると監督の顔が見える『シェイプ・オブ・ウォーター』が監督賞を中心に、作品の総合力で『スリー・ビルボード』が作品賞中心にという流れは変わらないのかなと思われます。

アカデミー賞の発表は3月、もちろんさらに大きな要因が出てきてがらりと様相を変えてしまう可能性もあるのですが…。

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村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年以上となった映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、に携わる一方で、個人でも各種記事の執筆、トークショーなどの活動も、。

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