皆さんこんにちは、やまもとです!今回はロシア(旧ソ連)の超有名監督、セルゲイ=エイゼンシュテインの映画の中で見られる技術や彼の思想についてお話しさせていただきたいと思います!
「モンタージュ理論」の確立
ここで言うモンタージュ理論とは、初めにある映像を見せた後に別の映像を見せると、先に見せた映像にもともとは見られない別の要素や意味を付加する理論のことです。
彼が関わった有名な実験からその内容を抜粋します。
①ある男性の映像を映す
②次に食べ物の映像を映す
③また①の映像を映す
これを観れば、「この男性はおなかが空いているに違いない」というような印象を受けないでしょうか?
また②を棺の中で眠る女性の映像に変えれば、全く同じ男性の映像を使っているのにも関わらず「この男性は女性の死を悼んでいる」という全く異なった解釈ができないでしょうか?
具体的な作品
「ストライキ」(1924)
…登場人物の顔に様々な動物の映像が重なって見えるシーン
→動物が象徴するイメージを先の人物に付加。例えばキツネなら「狡猾」、犬なら「従順」など
「戦艦ポチョムキン」(1925)
…爆発のあと石造の獅子が眼を覚ますシーン
→爆発は爆発でも、「石すらも黙っていない」ほどの凄惨さを持つ。
「線的な動き」
人物の直線的な動きにかなり魅了されていたようで、作品の中でもただひたすらまっすぐ群衆が同じ方向に向かっていくようなシーンが多々見られます。ウォルトディズニーと親交があったというエイゼンシュテインですが、それも彼がディズニー作品の原点である線描写に惹きつけられたことがきっかけになったようです。
具体的な作品
「アレクサンドル=ネフスキー」(1938)
…「氷上の戦い」のシーン。画面の中でどの登場人物にも直線的な動きをさせている。
・絶対的な権力への畏怖
映画の中で見られる彼の思想ですが、幼い時から家父長制の家庭で育ち、身近なところで圧倒的な権力者の前ではさからうことができないというのを体に植え付けられてしまっているようで、映画の中でもそうした強者と弱者のヒエラルキーの差異をグロテスクなほど描写されています。
具体的な作品
「戦艦ポチョムキン」
…「オデッサの階段」のシーン。弱者のシンボルとしてベビーカーに乗った赤ちゃんと、権力者の立場の代表としておそろしい形相をした武器を持ったコサック兵とが同時に登場する。
コメディ要素
シリアスな内容の中にもエイゼンシュテインはコメディ要素を入れることを忘れませんでした。チャーリー=チャップリンとも親交があったらしく、「笑い」というものが大切な要素であることを常に念頭に置いているようです。
具体的な作品
「アレクサンドル=ネフスキー」
…周りは戦闘中であるにもかかわらず、どこか腑抜けた発言をする兵士。
ビオメハニカ
最後に紹介したいのが、このビオメハニカと呼ばれる「身体の動き」についてです。幼いころにおばさんに連れていってもらったサーカスで見た人外な曲芸に惹きつけられ、最大限に人間ができる体の動かし方、というものに興味を抱いたことがキッカケらしく、映画の中でもそれを連想させる場面が見られます。
先の「線的な動き」とは矛盾しているように思われるかもしれませんが、これは恐らく彼が「人間の複雑な体の動き」にも人間の行動の原点ともいえる「直線的な行動」の両方にも惹きつけられたためではないでしょうか。偏った見方をしていないところが監督が生み出す作品たちをより面白みのあるものに仕立て上げてくれていると言えるでしょう。
具体的な作品
「戦艦ポチョムキン」
…船から落下する人物の動き。まるでサーカスの曲芸師のような落下。
いかがでしたか?今回はエイゼンシュテイン監督の映画の中で見られる様々な思想や技術についてお話しさせていただきました。彼の作品はただ鑑賞するだけでも面白く、研究の対象としても非常に興味深い作品ばかりです。これを機に皆さんも是非ご鑑賞くださいね!