2018.11.30公開『ヘレディタリー/継承』短評

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© 2018 Hereditary Film Productions, LLC

公開されるや否や、アメリカ国内でホラーの常識を覆した、現代ホラーの頂点、骨の髄まで凍り付き息もできない、などと絶賛の嵐を巻き起こした“完璧な悪夢”が日本上陸。

制作は設立わずか5年で『ルーム』や『ムーンライト』を生み出した、今ハリウッドで注目されているA24。本作はA24史上最大のヒット作となりました。

主演はトニー・コレット。共演にガブリエル・バーン。監督・脚本のアリ・アスターはこれが初長編映画となります。

ストーリー

ミニチュアジオラマ作家のアニー・ラハムは母のエレンが亡くなったばかり。母親との微妙な関係にあったアニーは、母の死にも微妙な気持ちのままです。

葬儀の直後から家族の周りでは異様な出来事が起き始めます。特に末娘のチャーリーは何かに動かされるように奇妙な行動をとり始めます。

さらにエレンの墓が何者かに荒らされたという連絡がスティーブンのもとに入ります。

チャーリーの行動に心を乱されたアニーは無理やり長男のピーターに妹を押し付けます。

ピーターは学校の仲間たちと悪ふざけのパーティーをしに行くので、正直妹の存在はお荷物でした。そして目を離した瞬間にナッツアレルギーのチャーリーが発作を起こしてしまいます。慌てて車を走らせるピーター、チャーリーが窓から顔を出した瞬間路上の電柱に激突、チャーリーは命を落とします。

チャーリーの悲劇にアニーの精神状態は悪化していきます。

一方でピーターもまた罪の意識から混乱するようになってきます。

家長のスティーブンは何とか家に安定を持たせようとしますが、うまくいきません。

これを機にアニーの心理状態は更に混乱していき、ピーターもまた幻覚にさいなまれます。

伏線の嵐

127分の映画の中でこれはどこに向かう映画なのかとにかくわからなくなります。それこそまさに夢の出来事のように、物語のテンションの上下・強弱に翻弄されていきます。

その中で、これが本筋なのか?と思われるものがいくつも出てきますが、それを見事に裏切ってくれます。

ホラー映画として怖さ以上にストーリテリングの複雑さに感心してしまう。そんな映画です。

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村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年以上となった映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、に携わる一方で、個人でも各種記事の執筆、トークショーなどの活動も、。

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