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昨今、世間でもLGBTなど性的マイノリティに関するニュースをちょくちょく見かけます。 小説や映画では、昔からいろいろな形で描かれてきましたが、その中でも「マイ・マザー」 (2009)で世界中に衝撃を与えたカナダの若き映画作家であるグザヴィエ・ドラン監督の「わた しはロランス」(2013)は衝撃的な映像美とファッションや音楽などの絶妙なハイセンスでこの 繊細なテーマを表現しています。
お話の中心は、国語教師で小説家の主人公・ロランスとその恋人・フレッドの10年にも及ぶ長 いラブストーリーです。舞台はまだ21世紀を迎える前のカナダです。徐々にLGBTやエイズに対 しての理解は進んできていた時代で、「女として生きていきたい」と思っているロランスはなかな か周囲にそのことを伝えられずに30年以上も過ごしてきたが、時代の波に便乗し告白の時を伺いっ ていました。そんなある年の誕生日にロランスはついにフレッドに自分がトランスジェンダーであ ることを告白するのです。もちろん理解に苦しむフレッドですが彼女は懸命に自分が一番のロラ ンスの理解者になろうと努力します。普通の彼女と女になりたいが女を愛する彼氏。普通のカップ ルには想像もできないような困難が2人を苦しめていくのですが、切っても切れないお互いを想 う絆やソウルメイトと呼んでもいいような2人の運命がとにかく切なくて感動します。
劇中お互いが感情をぶつけ合って対立したり愛し合ったりするシーンはいくつもあるのですがそ の中でも心に残ったオススメの名シーンは、カフェでランチをしている時に女装姿のロランスに 執拗に興味本位な質問を繰り返すウェイトレスに向かってフレッドが激怒するシーンです。トラン スジェンダーの彼氏を持つ複雑さや受け入れがたさと受け入れてあげたい気持ちの間で葛藤する フレッドの感情が爆発したシーンでもあります。怒りの中にロランスへの深い愛情が感じられ、と にかく感動してしまいます。
世の中には数々の性的マイノリティを扱った作品が存在しますが、この映画はそれを主題にしつつ もそうではない。単純に壮大な男女のラブストーリーになっているのも1つポイントです。下手 に面白おかしく性的マイノリティを描いた作品ではなく1人の一般人としてトランスジェンダーを 抱えた男性を描いており、主人公への感情移入やストーリーに入りやすいです。そのほかにも音 楽も美術、衣装までこだわりがすごいのもポイントで、こだわりの強い監督ならではの世界観は ぜひ大きな画面で見ていただきたいです。