「鋼の錬金術師」レビュー

鋼の錬金術師eyecatch

©2017 荒川弘/SQUARE ENIX ©2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会

https://www.youtube.com/watch?v=9NRt4keIZZk

公式サイト

見どころ

荒川弘のベストセラーコミック「鋼の錬金術師」がテレビアニメシリーズ、長編アニメーション映画を経てついに実写映画化。

監督は「ピンポン」「あしたのジョー」の曽利文彦。主人公のエドワード・エルリックには山田涼介。野心家の焔の錬金術師ロイ・マスタング大佐にディーン・フジオカ。ホムンクルスの美しい司令塔ラストに松雪泰子。

エドの義手・義肢のエンジニアのウィンリーに本田翼、マスタングの片腕ホークアイ中尉に蓮佛美沙子、ホムンクルスのエンヴィーとグラトニーに本郷奏多と内山信二。マスタングの親友ヒューズ中佐に佐藤隆太。

物語のカギを握る綴命の錬金術師に大泉洋、キーアイテム賢者の石に深く関わるDr.マルコーに國村隼、ハクロ将軍に小日向文世

鎧に魂を定着させ生き延びた弟のアルフォンス・エルリックもフルCGで再現。ボイスキャストは2.5次元舞台で活躍する水石亜飛夢が担当している。

ストーリーとしては、原作全体からエッセンスを抽出しつつも基本となっているのは原作の15話前後まで。タッカー編とヒューズ中佐編が全体のクライマックスとなっている。

原作でのキーパーソン、キング・ブラッドレイ大総統、兄弟の父親ホーエンハイム、“傷の男”スカー、剛腕の錬金術師アームストロング少佐は登場しない。

本作単体でも充分一本の映画作品にはなっているものの、続編の可能性も十分感じさせる作りになっている。

危険水域に入りつつあるコミック原作の実写映画化

コミック原作の実写映画は最早定番となりつつありますが、その中でもここ数年いよいよ原作のチョイスにどうなるかと心配になるものに手が延ばされつつある。

象徴的なものが2015年の「進撃の巨人」二部作。いよいよ現実の延長線上にない原作に手が付けられ始めたマイルストーンになった。その後も「テラフォーマーズ」「GANTZ」「るろうに剣心」シリーズ「寄生獣」二部作と続く。

今年になってからも「ジョジョの奇妙な冒険」「銀魂」「亜人」と冒険的ともリスキーとも取れる作品が実写化された。そしてこの「鋼の錬金術師」が実写映画化作品の中に名を連ねた。

ポイントを押さえたキャスティング

映画を見るとやはり、曽利文彦監督の長編映画のストーリーテリング、物語の構成力の弱さを感じずにはいられない。技術畑の出身の監督はビジュアル面を重視することでストーリーテリングが後に回ることが多いが、今回もその感は否め神保哲生ない。

同じことは山崎貴監督、樋口真嗣監督、紀里谷和明監督などの作品にも共通している点でもある。山崎監督は実績のある「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズは脚本家実績のある古沢良太に任せた。樋口監督も「シン・ゴジラ」では庵野秀明監督と組んだ。ただ曽利監督は本作でも自身が脚本も担当しているので、原作を網羅するということと映画を仕上げることのバランスを意識しすぎている様子が目についてしまった。

ただ、それを補って有り余るキャスティングの絶妙さが本作を助けている。キャスティングが物語をここまで助けて映画を成立させたのは曽利監督作品としてはそれこそ「ピンポン」以来のことかもしれない。

主演の山田涼介は映画の顔として充分役割を果たしているし、焔の錬金術師マスタングを演じるディーン・フジオカ、ホムンクルスのラストの松雪泰子、そして禁断の選択をすることになる錬金術師タッカーに大泉洋を配置した。映画の中盤以降この三人の中の誰かが必ず画面に登場し映画をピリッと締める。

特に大泉洋のタッカーは大泉自身のパブリックイメージもあってその邪なキャラクターのインパクトは大きい。

元来、自身が所属する演劇ユニットTEAMNACSの定期公演ではかなり強面な役割を演じているものの、映像作品の中ではなかなかその部分を見せてこなかった。ただ、今年に入って「東京喰種」では一見すると本人に見えない特殊メイクで映画全体の“敵役の部分・憎まれ役”を一身に引き受けて見せた。

気になる、これから・・・。

やはり見え隠れするのが続編の存在。となるとやはり欠かせないのがホーエンハイム、キング・ブラッドレイ、スカーの3人。曽利監督はキャスティングを日本人で固めることで観客の心に共感を生むこと目指したと語っている。となると、仮に続編がでるとなるとこの三人も日本人が演じることになる。果たして観客が納得できるキャスティングを成功させることができるだろうか?原作モノ映画の場合、実は原作ファン以外の観客のほうが多いというデーターもある。なので、原作ファンの目を極端に気にする必要はないのかもしれない、ただ映画ファンに対して納得させられないと厳しいものになるだろう。不安材料を理由に見ないというのはない、劇場でジャッジを!

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kentaro-muramatsu

村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年以上となった映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、に携わる一方で、個人でも各種記事の執筆、トークショーなどの活動も、。

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