誰も責めることはできない現実 ー「子宮に沈める」(2013)


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最近みた社会派の映画の中で一番衝撃的だったのが「子宮に沈める」(2013)です。
監督は緒方貴臣という方で比較的若手の方です。お話は、2010年に大阪でおきた2児虐待死事件が元になっており、淡々としたストーリー展開の中で幸せな家庭が崩壊し、最後には我が子を殺害するまでに至る様子が描かれています。基本的に主人公など登場人物たちの感情や考えがドラマチックに語られることがないので、みている私たちは破滅へと向かって行く主人公を傍観しているような気持ちになります。

初めは素敵なお家に1男1女のごく一般的で幸せに満ち溢れるような家庭の様子が描かれる。しかしそこに旦那の姿がない。仕事に出ているのだろうが、それにしても主人公と子供達だけで成り立つ世界が妙である。知らず知らずに旦那への不満が溜まっていたのだろうか、その後夫婦は離婚を迎えます。そしてシングルマザーとして子供2人を連れて家を飛び出した主人公でしたが、現実はそんなに甘いものではありませんでした。育児に追われる日常の中で仕事もなかなか見つからず、友人の誘いで夜の世界で働くことになる。そこから一気に主人公は転落して行きます。最終的には、育児放棄に至り、生き残った娘を溺死させ、自身もまた子宮に傷を残すのである。このお話が淡々と描かれている様子がなんとも心苦しいです。特にママがいなくなった後、子供たちが家の中で衰退して行く過程は、もの凄くリアリティがあるシーンになっています。かわいそうという感情を通り越して、空虚な気持ちになってしまいました。

社会の闇を切り抜く映画はたくさんありますがこの作品は、それらとは一線を画す新しい手法による作品になっています。昨今よく耳にする幼児虐待、ワンオペ育児やママの社会的孤立なんかを鋭く描いた作品ですが、誰が誰を悪いとも言えない現実を痛烈に表現しています。似たような映画で是枝裕和監督の「誰も知らない」(2004)は、あまりにも有名でその当初話題を呼んでいましたが、内容は「誰も知らない」の10年後の日本バージョンで、しかしもっと複雑な人間関係が「子宮に沈める」では描かれているように思います。監督をはじめ、俳優陣もそこまで話題に上がるほどの有名人ではないからこそ、この映画はもっと広く認知されるべきだと感じました。結構内容は、ハードで直視するにはあまりにも残酷な内容で、すぐに受け入れがたい作品ですが、この映画をみたおかげで、昨今おきている問題に関心を向けることができます。誰かと見るにはちょっと重いテーマですが、是非ご覧になっていただけたらと思います。

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