リアルな母親像 ー「KOTOKO」(2011)を見て

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お母さんと子供の関係はとても複雑で、さまざまな映画のテーマとして語られてきました。
その中でも少し異色な作品に塚本晋也監督の「KOTOKO」があります。こちらは、第68回べネチア国際映画祭オリゾンティ部門で日本映画として初めて最高賞をもらった作品でもあります。今回はこちらについてご紹介します。

● 深い孤独の中の女性

ジングルマザーのコトコは、幼い子供と暮らしている。彼女は、育児や仕事などすべてを完璧にこなさなければならないという強迫観念から精神的に不安定になっていた。錯覚や幻聴に悩まれ、挙げ句の果てには子供にまで危害が及び虐待を疑われてしまうのである。そんな折にある日田中という小説家に出会い、彼はコトコに惹かれていく。しかし彼女は、それを拒み、執拗な田中のアプローチも最後まで受け入れることはないのです。最終的に子供を殺めようとするまで追い詰められるコトコ。激しく荒れる描写やグロテスクなシーンも要所にあり、彼女の精神がどんどん不安定に拗れていく様がすごくリアルに描かれており恐怖さえ覚えます。しかしこのような「孤独」による精神疾患や虐待はきっと世の中の迷えるシングルマザーやシングルではないお母さんにも起こっている問題なんだな、と少し考えさせられました。

●Coccoのシンクロ率がすごい

主人公を演じるのは、アーティストのCoccoです。彼女と主人公コトコのシンクロ率がすごいんです。Cocco自身も精神的に不安定な時期などを経てきているので、とても彼女の演技がリアルすぎて感動します。演奏なしの歌声も映画の所々に挿入されており、その歌もまた映画の世界観にマッチしています。Coccoファンにとってはもちろんですが、Coccoの歌を聞いたことがない人でも心にしみる切なさや優しさを感じることができます。また映画の美術にも注目です。コトコの自宅の装飾などはすべてCoccoのアイデア・自作によるもので、キラキラとファンタジックな装飾が素敵なのですが映画の中ではそれがどこか奇妙にも感じられます。まさにこの映画は、塚本監督のCoccoへの熱いラブコールが念願叶って出来上がったような作品です。

難しい主題と塚本監督らしい独特な表現描写によって、人の好き嫌いが分かれるのと、見るのに結構なエネルギーと覚悟が必要な作品ですが、久しぶりにエネルギッシュな日本映画をみたな、と思わせてくれるような作品になっています。ラストはとても感動的です。見たあとは誰かに話したくなるような作品です。ぜひご覧ください。

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