2018.05.04公開『ラプラスの魔女』短評

ラプラスの魔女アイキャッチ

©︎2018「ラプラスの魔女」製作委員会

オフィシャルサイト

東野圭吾の同題ベストセラー小説を三池崇史監督によって映画化。

主演は嵐の櫻井翔。三池監督とは9年前の『ヤッターマン』に続く共作となる。

魔王と魔女の領域の予知・予測能力をもつ若き男女に福士蒼汰と広瀬すず。

事件を追う刑事に玉木宏、カギを握る映画監督に豊川悦司と主演級が揃った。

これに佐藤江梨子、リリー・フランキー、志田未来、TAO、高嶋政伸が加わる布陣はまさにオールスター映画という陣容。

主題歌は次世代音楽プロデューサーとして世界的に注目を浴びるアラン・ウォーカーの『FADED/フェイデッド』。

原作をうまく翻案し、映画ならではの見せ場たっぷりのサスペンスエンターテイメント作品に仕上がっている。

ストーリー

地球化学の専門家青江はとある温泉郷での硫化水素による死亡案件の調査にあたる。故意にこの状況を作れるとは思えない青江は不幸な偶然が重なった事故という結論を出そうとしていたが、そこに事件性を疑う刑事中岡が現れる。死亡し映像プロデューサー水城には多額の生命保険がかけられていて、更に受取人は結婚したばかりの大きく年の離れた妻だった。そのことから中岡刑事は事件性を疑っていたが複雑な地形と硫化水素という物質の不安定さから刑事の疑惑を退ける。ただ一つ青江が気になることは現場に現れた不思議な空気をまとった若い女性円華の存在だった。円華は青江に自分は魔女だと名乗った。

そんな青江のもとに中岡がまた新しい事件の情報を持ってくる。死んだのは売れない俳優で死因は硫化水素中毒。前の事案と何の関係もないと思っていたが死んだ俳優とプロデューサーは天才と呼ばれた映画監督甘粕才生と関わりを持っていたことを知る。

甘粕才生は数年前に娘が硫化水素自殺を起こしていた。ここでも硫化水素というキーワードが出てきたことで偶然の出来事とは思えない青江と中岡。甘粕家の事件では妻と息子も巻き込まれ、妻は死亡、長男の謙人も命こそとりとめたものの意識不明の植物状態になってしまっていた。

甘粕はその事件以降のことをブログにまとめていた。そこには羽原全太郎という医師が手を差し伸べてきたことが綴られていた。羽原の特別な手術が成功し、謙人は徐々に回復をしていく。しかし、復活した謙人はそれまでの彼とは全く別人のようであった。その姿を見た甘粕は息子と距離を置くことを決意し、その後行方知れずとなっていた。

謙人は脳に受けて施術によりあらゆる物理現象を予測できるようになっていた。

その能力は数学者ピエール=シモン・ラプラスによって語られた

『もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えている。』

というラプスラスの悪魔そのものだった。

謙人と親しくなった羽原全太郎の娘円華はやがて自分にもその力を求めるようになる。彼女もまたラプラスの悪魔(魔女)となった。

青江は円華の行動目的は謙人の暴走を止めるためで、そのために事件現場に現れ、青江に協力をしてきたことだと推理するが…。

ますます続く東野圭吾原作映画化作品。

今年すでに『祈りの幕が下りるときが』が公開済みの東野圭吾原作映画。そして五月に本作『ラプラスの魔女』が公開。また冬に堤幸彦監督によって『人魚の眠る家』が篠原涼子&西島秀俊のW主演で映画化される。来年も以降も17年に公開された『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の日中合作版、木村拓哉&長澤まさみ主演の『マスカレード・ホテル』、玉岡裕太、吉岡里帆、染谷将太というフレッシュかつ実力派の若手俳優競演の『パラレルワールド・ラブストーリー』が制作中。ドラマ化作品も豊富ですが、映画化作品に絞ってもスで20本を超える作品が国内外で製作されています。もはやここまでくると“東野圭吾もの”というジャンルをつくってもいいのではないかとすら思えてきますね。


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村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年以上となった映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、に携わる一方で、個人でも各種記事の執筆、トークショーなどの活動も、。

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