アメリカの今を象徴するヒロイン映画百花繚乱の第90回アカデミー賞の大本命『シェイプ・オブ・ウォーター』紹介

シェイプ・オブ・ウォーター

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以前は独特の保守的なスタンスを保ってきたアカデミー賞も白人中心のノミネート編成を“白百合のようなオスカー”と評されてからは多様性、マイノリティへの理解を遅まきながら始めるようになりました。

それが昨年の『ムーン・ライト』の作品賞受賞へとつながったと言っていいでしょう。この作品は人種に加えてLGBTや薬物などの要素を盛り込んだ作品でした。

そして今年はアメリカ社会で“METOO”から始まった女性差別問題やハリウッドのもその主舞台となっていたことが明らかになったセクシャルハラスメント問題が大きく取り扱われていること、そして大統領の発言も深く関わった人種差別問題も改めてクローズアップされたなかでのノミネート発表となります。。

そんな今年のアカデミー賞は上記の要素を全く含んでいない作品といえば『ウィンストン・チャーチル』と『ダンケルク』の同じことを別々の視点で描いたコインの裏表のような作品とポール・トーマス・アンダーソン監督の『ファントム・スレッド』くらいで他の主だった作品はこの要素が強く含まれています。

このようなテーマを含む作品ですから、当然現代社会と世界を舞台にした『スリー・ビルボード』や『君の名前で僕を呼んで』などの作品が並ぶわけですが、そんな中で一種独特で異様な空気をまとった寓話作品がギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』です。

〈ストーリー〉

1962年、幼いころのトラウマから声が出せないイライザは政府の研究所で清掃員として働いています。冷戦下のピリピリした国際社会状況も直接的には彼女とは関係ありません。そんなある日、研究所からあるモノが届けられます。

正体不明のその存在はアマゾンの奥地で神のように崇拝されていたヒト型水棲生物でした。横暴なエリート軍人ストリックランドによる”彼“に対して拷問のような研究が行われ、施設には怪しい悲鳴が響きます。

イライザはついに“彼”と対面します。彼はいわば半魚人ともいうべき存在で、高い知性を誇っていました。二人の交流が続く中、彼の処遇をめぐって多くの人物の思惑が動き始めます。

二人の運命は?思惑の行方は?

ここまで山あり谷ありのデル・トロ監督

デビューをメキシコで飾ったギレルモ・デル・トロ監督。ただしすぐにハリウッドに呼ばれた『ミミック』は多くの権限をスタジオに握られていいて、作品は批評・興行の両面で大失敗となりました。

『ヘルボーイ』シリーズと『パンズ・ラビリンス』で批評と工業の面で我流を通したまま成功を収めたことで、改めて自身の立ち位置を確保しました。

ただ、その後も本来であれば自分がメガホンをとるはずだった『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚『ホビット』は本来は自身がメガホンをとって二部作でという企画振興でしたが、とん挫。結果として脚本家チームの一角に名前を残すだけにとどまりました。作品は結局『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが監督しました。

企画段階からかかわった企画がうまく進まなかったことへの、うっぷんを晴らすような大型企画『パシフィック・リム』で待望の大作モンスター映画を作ることができた監督が自分のホームというべき中・小規模作品の『シェイプ・オブ・ウォーター』を放ちました。

気が付けば長編監督デビューから25年を迎えたデル・トロ監督。ついに頂点を極めるか?アカデミー賞発表は日本時間の3月4日です。
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村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年以上となった映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、に携わる一方で、個人でも各種記事の執筆、トークショーなどの活動も、。

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