「美しき諍い女」(1991)の映画レビューと感想

美しき諍い女

©1992 Pierre Grise Productions – France 3 Films Production – A.D.A.C.P. – Paris

あらすじ

フランスの小説家、オノレ・ド・バルザックの短編小説「知られざる傑作」を原作に、生まれた作品。画家のフレンホーフェルは、名を馳せるほどの大人物であるにも関わらず、世間から遠く離れた静かな古城でもとモデルの妻と暮らしていた。ある時、彼のもとを一人の若い画家とその恋人のマリアンヌが訪れる。何の因果か、フレンホーフェルはマリアンヌを一目見て、彼女をモデルとすることで自分が長い間描ききろうとしなかった究極に美しい作品「美しき諍い女」の製作に取り掛かるようになる。

キャスト

ミシェル・ピコリ

ジェーン・バーキン

エマニュエル・ベアール

感想

238分もある超大作であるにもかかわらず、最後まで観客に緊迫感を持たせ続けることでハラハラさせられる作品となっています。まさに文字通り画家が描こうとした「美しき諍い女」の姿が映画の中でも映し出されていました。確かに絵のモデルとなったマリアンヌは若く美しい女性でしたが、何がそこまでフレンホーフェルを魅了し続けたのか、また筆を握り続けていく中で、フレンホーフェルが何を見出し、何を考えたのかも非常に考察のしがいがあると思いました。

一方で「諍い女」という名前が与えられているだけあって、諍いの形は絵画の中だけではなく、マリアンヌを取り巻く環境にも少なからずそうした影響が見られたと思います。例えば、彼女に対するフレンホーフェルの妻や、画家としてはまだまだ青い彼女の恋人の心理描写がいい例でしたね。一口に嫉妬とか憎悪といった言葉では説明のつかないような感情が登場人物それぞれの中で渦巻いていたのが、作品を鑑賞しながら手に取るように伝わってきました。

普通、映像は文字よりも情報を多く与えやすいものだと思いますが、個人的にこの作品の内容を読み解くためには、与えられる情報から理解するよりも、ある程度自分で考えることが必要とされたように感じました。特にフレンホーフェルとマリアンヌがともに作品に取り組むシーンが何とも言えないほど手に汗を握らせましたし、最後の最後で彼が書き上げた作品を目にしたときの人物たちの表情の解釈の仕方は、人によって分かれるのではないかなと思いました。まだこの作品を見たことがない方は、是非鑑賞されてみると良いかと思います。そして、芸術とは何か、美とは何かという哲学的な疑問を登場人物たちとともに考えていただければと思います。

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山本昴

やまもとです。大学生です。基本プラス志向なので悪いことは言いません。 自分を表す一言は「経験のコレクター」です。

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