突然ですが、皆さんは映画を見る際に何に注目しているでしょうか?
話の筋、物語の展開、役者、音楽、小道具…
色々なものが挙げられるかと思われますが
「服装」に関してはどうでしょうか?
「服」と言っても、
「△△のブランドのものだ」
というのではありません(でもそれもおもしろそうですね!)。
ここで言う、「服」とは
「映画の中でそれがどういう役目を果たしているのか」
という象徴のことです。
いろいろな分析サイトがある中、
意外とこの「服装が映画の中で果たしている役割」について言及しているものは少ないなと思ったので、
今回は服装とそれにまつわる映画の楽しみ方についてお話ししたいと思います!
分析に用いるのは、2010年に公開された「シャッターアイランド」という映画です。
すごく面白い映画ですが今回はあらすじの紹介は省略させていただきます。
①保安官に似つかわしくない服装

上の画像を見ていただくと、左の人物が典型的な保安官らしい服装をしているのに対し
右の人物の服装からは一つだけ違和感を覚える箇所があります。
彼のネクタイの柄に着目して下さい。
およそ保安官の服装からは浮いた様子を感じさせる、
派手なネクタイをしていますね。
すぐにこれが奥様からのプレゼントだということも彼の回想からわかりますが
ではなぜ、わざわざこんな辺ぴな場所での仕事のために
思い入れのあるネクタイを着用してきたのでしょうか?

偶然と言われればそうかもしれませんが、
映画の中で偶然はあり得ません。
ただ見方を少し変えるだけでこの時点で彼の奥様が話の流れに関わってくるのでは、とは考えられないでしょうか。
②重要人物?からのフェイント!
また、更にこの二分後には一人の精神病患者の女性と主人公の視線が長く絡むシーンが始まります。
ですがはっきり言ってこの女性はこの後の作品の中で何の役割も果たしません。
ではなぜ、監督はこのシーンを取り入れたのか。

恐らくこの女性が今後の展開のカギとなるというような意味を持たせることで、
観客を混乱させたかったのだと思います。
写真の中で、女性と一緒に映し出されている画面いっぱいの花壇に着目してください。
花の配色が彼のネクタイの模様と、先に挙げた画像の中で見られる、奥様がよく着られていた服装を想起させませんか。
カメラは徐々にこの女性へとフォーカスしていくよりも前に
花が画面いっぱいを占める上のような構図から始まっています。
つまり、視線が絡まり始めたきっかけはこの女性にではなく
花の方にあった、ということです
もっと言えば、奥様を思い出させるものが視界にちらついた気がして
ふと顔を挙げるとたまたまそこに全く関わりのない人物がおり
不思議な行動をとったせいで「重要人物かも?!」、と思わされたとも考えられます。
またこの時点で主人公が仕事の最中にも奥様のことが頭の片隅にあると思えば、
やはり今後の展開で彼女が何かしら意味を持つ人物とも考えられないでしょうか。
ちなみにここまでで映画が始まってから10分も経っていません。
まだまだ物語はここから、という冒頭に過ぎないですが
こういう風にちょっと服装を見るだけでも物凄く興味深い作品となっています。
いかがでしたか?
今回は同じ映画でももう一度見たくなる方法を服の観点から紹介しました。
同じ映画でも少し見方を変えるだけで、
全く話が異なって見えてくるのが映画の面白いところです。
映画は一回しか見ない主義、という方もこの方法を試してみて映画をリピートして見る楽しさを知っていただけたらと思います!