前作を上回る最高のエンターテイメント。必見。-『キングスマン:ゴールデン・サークル』レビュー

kingsman-goldencircle-eyecatch

© Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

オフィシャルサイト

外見は高級紳士服店“キングスマン”、しかしその正体はどこの国にも属さない諜報機関だった…。『キック・アス』シリーズのマシュー・ヴォーン監督が2014年に放ち、大ヒットしたスパイアクション映画『キングスマン』が3年ぶりに『キングスマン:ゴールデン・サークル』としてパワーアップして帰ってきた!

前作『キングスマン』復習

ロンドンの街をぶらぶらとしていた若者エグジーの前に一人の男が現れる。彼の名はハリー。彼はエグジーを諜報機関“キングスマン”にスカウト。下町でくすぶっていたエグジーは、諜報員としての厳しい訓練と英国紳士としての立ち振る舞いを身に着けていく。

そのころ、アメリカン人実業家ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が表の顔に隠れて世界的な陰謀を張り巡らせる。ヴァレンタインは通信料無料のSIMカードを世界中に配布、実はこれに特殊な信号を送ると相手はヴァレンタインの意のままになる。着々と進む陰謀、内通者の存在もあってハリーが銃弾に倒れる。エグジーは全て解決するためにヴァレンタインの本拠地に潜入し、陰謀を寸前のところで防いだ。

そして『キングスマン:ゴールデン・サークル』

ハリーの死から1年が経ち、エグジーも一人前のスパイに。そんな彼をヴァレンタインと内通していた裏切り者・チャーリーが襲撃。腕をロボットアームにしたチャーリーはかなりの強敵、何とか振り切ったものの何かが動き始めた予感が。

翌日、エグジーは恋人でスウェーデンの王女ティルデの両親(つまり国王夫妻)との会食、しっかりしたところを見せるエグジーに驚きの一報が。キングスマンの店舗、本拠地、さらにはエグジーの家まで突然のミサイル攻撃を受けて壊滅する。

敵の名は“ゴールデン・サークル”。そのリーダーはカンボジア奥地に50年代風の街並「ポピーランド」を再現したサイコパスな女王ポピー(ジュリアン・ムーア)。

マーリンはキングスマン壊滅の危機に瀕したときに発動される“審判の日作戦”に手を懸ける。そこで手に入れたのはケンタッキー州の蒸留所の名前が記された一本のバーボン。その蒸留所こそキングスマンの“いとこ”ステイツマンの本拠地でした。

ステイツマンの本拠地でエグジーとマーリンは驚くべきものを見る。それは死んだと思ったハリーの姿。奇跡の再会に喜ぶ二人で、しかし肝心のハリーは治療の副作用で多くの記憶を失っていて、当然二人のこともキングスマンのことも覚えていない。ハリーの記憶は?ポピーの陰謀は?果たして???

毒気たっぷりのアクションは痛快、

カリカチュアライズされた英米文化、

わかりやすすぎるスパイ描写も健在

前作の魅力は、なんといっても「英国紳士とスパイ映画の極端な再現」と「個性的なキャラクターとその装い」。

映画のスパイ映画の流れは2002年の「ボーン・アイデンティティー」で大きく変わった。それまでの007シリーズを筆頭に、“スパイ映画は優雅なもの”というイメージがあったものの、ジェイソン・ボーンシリーズの“マジ当てアクション”以降、スパイ映画は徹底的にシリアスにリアルにというのが鉄則化しました。その大きな波はとうとう本家の007シリーズにも波及、ダニエル・クレイグがボンドに就任すると一気にリアル指向に。

レトロなスパイ映画描写を味わいたければ時代の針を冷静時代に戻した「コードネームU.N.C.L.E」や「アトミック・ブロンド」のような映画でないと味わえないものになっていた。しかし、現代を舞台にしたものでも遊び心満載でもいいじゃないか?という思いを映画化したのが「キック・アス」のマシュー・ヴォーンと彼とともに原作と製作を担当したマーク・ミラー。そんな中で作られたのが前作「キングスマン」かつてスパイアクション「国際諜報局」シリーズで諜報員ハリー・パーマーを演じたマイケル・ケインをキングスマンのリーダー“アーサー”を演じさせたり、主要メンバーがアーサー王と円卓の騎士を模していたりと、端端までスキのない英国ネタを盛り込む。キングスマンの装いもオーダーメイドスーツ(防弾使用)に防弾傘、情報を映し出す高級フレームの眼鏡、特殊機能満載のペン、ライター、腕時計、磨き上げた黒革靴で仕上げた。

本作ではわかりやすすぎるアメリカ人スパイ組織ステイツマンが登場して英米の差を極端に描いて笑いを誘う。

中盤の雪山でのアクションシーンは70年代から80年代のスパイ映画ではすっかりお馴染み。

三部作構想もあるこのシリーズ。監督がこの作品の位置付けを例えるのに、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』を引き合いに出していたりするので、あながち夢物語でもないのかもしれない。

ガンダムバナー

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

kentaro-muramatsu

村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年以上となった映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、に携わる一方で、個人でも各種記事の執筆、トークショーなどの活動も、。

-感想・レビュー